水あげ方法の中でもっとも基本となるのが「水折り」です。
水中に浸したまま茎を折り、ほぐれた切断面から水を吸い上げる方法です。
他の方法を併用する場合でも水折りは必ず最初に試します。
はさみで切る「水切り」法もありますが切り花の中にははさみなどを
嫌うものもあり、植物に詳しくなければ見分けがつきません。
またできるだけ断面を清潔に保つためにも道具を使わない
水折りのほうが安全です。
さらに刃物で切るよりも折ったほうが茎先がほぐれ、繊維が露出して
断面の面積が大きくなるので、より多くを吸水できます。
切り花を買ったら、まずは水折りを試してみてください。
この段階でパキっと気持ちよく折れればその花材は水折りで充分です。
それでも折れなかったらはさみを使います。

水折り
菊・トルコぎきょう・カーネーション・りんどう など
水切り
ガーベラ・コスモス・ネリネ・フリージャ など
水折りを試してみて、折れなかった切り花には「水切り」が有効です。
茎がやわらかすぎたり、水分が多くて折っても曲がるだけの切り花や、
本来は水折りに適していても水が下がっていると、手で折るのは無理です。
水中に浸したままハサミで切る、水切りにします。
水中でカットした茎には水圧もかかるので、元気な切り花なら
1〜2秒で水があがりますが、その効果は遅くとも1時間程度でわかります。
水切りしたまま1時間置いても葉や花首のハリなどが戻らなければ、
水があがっていないということです。もう一度水切りを繰り返すか、
切り花の種類によっては、「深水」か「逆さ水」を併用しします。
ただし同時に、ハサミや水が汚れていなかったか、花そのものが
病気でないかなどもチェックして下さい。水折りか水切りで、ほとんどの
花は水があがるのですから。

「深水」は文字どおり、深い水に浸ける方法です。
植物は水あげ中にも絶えず水分を蒸散し続けるので、
葉やわき枝の多い切り花、水の下がり方がひどい切り花などでは、
切り口からの吸水だけでは追いつかないこともあります。
そこで水の深さに比例した、水圧の強さで水を押し上げる、
物理的な水あげ方法が「深水」なのです。
深さのある器に葉まで一緒に水に浸し、周囲を新聞紙などで包むことで、
葉やわき枝からの蒸散を抑えて、わずかながら葉や茎からの
吸水も助けます。
また、曲がった茎や葉の形を整え、隅々まで水を行き渡らせることが
できます。
必ず水折りか水切りのあとで施す二次的な方法なので、
やや面倒だと思いがちですが、あらかじめ新聞紙で切り花を包んでおけば、
水折り、水切りのついでにできてしまいます。
また湯あげや燃焼法のあとにも必ず併用し、水あげ効果を促進します。
ひまわり・アイリス・ラナンキュラス・アンスリウム など
深水
「逆さ水」というと茎を逆さまに持って、水をかける方法だと思う人も
いるようですが、これは切り花を傷めます。
どんなに新聞紙で保護しても、この方法では花に水がかかってしまいます。
水に浸けると傷みやすい種類の葉や茎にも水を行き渡らせたいとき、
しおれていて深水では負担が大きいときに、深水の代わりにする方法です。
傷みやすい挿類の葉は、葉まで水に浸す代わりに、葉の裏から霧吹きで
水をかけ、葉の裏側だけを濡らす必要があります。
つまりそのときに花を逆さに持つことからつけられた名前です。
深水と同様、水折りか水切りと必ず併用し、さらに効果を上げたければ
湯あげか燃焼法もできますが、これらは逆さ水をしたあとに行います。
葉物・フランス菊・スプレー薔薇・ソリダスター など
逆さ水
実は私達プロが行う水あげの中で一番確実なのが「湯あげ」です。
温度やタイミングが難しそう、失敗すると切り花をダメにしそう…なんて
思いがちだけれど、コツをつかめば思っているよりも簡単です。
ほとんどの切り花に効果のある方法だから、ぜひ挑戦してみましょう!
湯あげで水があがる原因は、温度差によるものと思っている人もありますが、
そうではありません。まずお湯に茎を浸けることにより、導管内の空気を
膨張させて外に追い出し、いったん真空状態にします。
次に水に浸けると導管が冷えて再び圧力がかかるので、そのとき断面に
接していた水を吸い上げるというわけです。
注意する点は、熱を上部に伝えないようしっかりと新聞紙で保護しておくこと。
ただし、このあと必ず深水と併用するので面倒な準備ではありません。
芍薬・ロベ・かすみ草・ニゲラ など
湯あげ
茎の切り口を焼くだなんてこわい!と思われそうですが、
ちゃんと物理的な理由があり、実際に相当な水あげ効果があります。
理屈は湯あげとほぼ同じですが、お湯よりも高温を与えるため、
効果も高くなります。
まず茎の根元を炎でじかに焼くことによって、導管内の空気をに追い出し、
中を真空状態にします。このまま水に浸けることにより、出ていった
空気の代わりに急速に水があがるのです。
しかも炭状に焼いた部分が活性炭フィルターのような役割を果たすため、
ここから吸水する水を浄化し、さらに水の腐敗防止にも役立ちます。
焼いたあとに深水をするのも湯あげと同じやり方です。
ほとんどの切り花に有効ですが、焼ききるまでに時間がかかると
熱が伝わるので「早く焼ける花」、つまり水分が少なめの花に向いています。
ばら・千日紅・ブバルディア など
切り口を焼く
太い 梅・桜・ぼけ・その他枝物 など
根元割
主に枝物に使う方法で、枝が手で折れなかった場合に使います。
枝物は茎の太さ、つまり水に浸かる部分の大きさの割には
葉やわき枝が多く、それに伴う水の蒸散量も多いので、吸水面の
表面積をできるだけ広げる工夫が必要です。
それには手で折って、切り口をささくれさせるのが一番ですが、
太いもの、堅いものは無理です・
そこで切り口を縦に切れ込みを入れて断面を広げるのが根本割りです。
また種類によって、水あげのいいものと悪いものの差が激しいのも
枝物の特徴なので、湯あげや深水を併用すると効果が上がります。
さらに切り口から樹液や油脂などを出して、自らの導管ばかりか、
水を汚して一緒にいける花の吸水まで妨げるものもあるので、
アルコールなどの薬品を使うとよいでしょう。
細い 梅・桜・ぼけ・その他枝物 など
根元叩き
 枝が細くてハサミが縦に入らない、草ものだけれど繊維が堅い切り花は、
水折りや根元割りをするのが難しいと思います。
根元叩きは切り口をハンマーなどで叩き、繊維をほぐして吸水
面痴を広げる方法です。
 繊維がつぶれると、導管もふさがってしまうのでは…と思うでしょうが、
植物の導管はごく細くて丈夫です。
とくに根元叩きを必要とするような切り花は、この程度で繊維が
つぶれるものではありません。
ただし、叩くことによっで切り口から樹液やアクなどの汁が出たり、
繊維や表皮のカスが出てしまうと、水が汚れる原因こもなること、
また叩いたときの衝撃で小花などが散る恐れもあることから、
必要なときだけに注意深くやってください。
湯あげと併用することによって、それらを防ぐこともできます。
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